健康管理手帳とは|対象業務(石綿・粉じん・ベンジジンなど15業務)と交付要件、離職時の申請先、年2回の無料健診を産業医が解説

健康管理手帳とは|対象業務(石綿・粉じん・ベンジジンなど15業務)と交付要件、離職時の申請先、年2回の無料健診を産業医が解説(うえまつ産業医事務所)
がんなどのおそれがある業務の経験者は、離職後も手帳で健康診断を受けられます。

「石綿を扱っていた社員が退職する。会社として何か手続きは必要?」「健康管理手帳はどんな人がもらえる?」。特定化学物質や石綿、粉じんを扱う事業場の人事担当の方からいただく質問です。この記事では、京都で嘱託産業医をしている筆者が、労働安全衛生法第67条の健康管理手帳について、交付の対象となる業務と要件、申請の方法、手帳による健康診断、会社が退職者にできることを解説します。

結論:がんなどのおそれがある業務の経験者は、離職の際・離職後に手帳を受け取れる

  • がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務(石綿、粉じん、ベンジジン、塩化ビニルなど15業務)に従事し、一定の要件にあてはまる人には、離職の際または離職の後に、都道府県労働局長が健康管理手帳を交付します(労働安全衛生法第67条、同法施行令第23条)。
  • 要件は業務ごとに異なり、従事した期間(3か月以上、4年以上、5年以上など)や、胸部エックス線の所見などで決まります(労働安全衛生規則第53条)。
  • 手帳を持つ人は、指定された医療機関で年2回(じん肺の手帳は年1回)、無料で健康診断を受けられます。
  • 申請先は、離職の際なら事業場の所在地、離職の後なら住所地を管轄する都道府県労働局長です(同規則第53条第2項)。

交付の対象となる業務と要件

業務要件
ベンジジン、ベータ―ナフチルアミン、ジアニシジン(それぞれの塩を含む)の製造・取扱いその業務に3か月以上従事
粉じん作業じん肺管理区分が管理二または管理三
クロム酸・重クロム酸などの製造・取扱い(鉱石から製造する事業場の業務に限る)4年以上従事
無機砒素化合物の製造工程での粉砕など5年以上従事
コークス・製鉄用発生炉ガスの製造(炉上・炉に接して行う業務)5年以上従事
ビス(クロロメチル)エーテルの製造・取扱い3年以上従事
ベリリウムなどの製造・取扱い(粉状の物以外は除く)両肺野にベリリウムによるびまん性の結節性陰影がある
ベンゾトリクロリドの製造・取扱い(太陽光線で塩素化反応させる事業場)3年以上従事
塩化ビニルの重合など4年以上従事
石綿等の製造・取扱い次のいずれか:①両肺野の石綿による不整形陰影または胸膜肥厚 ②石綿の吹付け・除去・解体などの作業に1年以上従事し、初めてばく露してから10年以上 ③それ以外の石綿等の取扱い作業に10年以上従事 ④これらに準ずる要件
石綿の粉じんを発散する場所での業務(石綿等の製造・取扱い以外)両肺野の石綿による不整形陰影または胸膜肥厚
1・2―ジクロロプロパンの取扱い(厚生労働省令で定める業務)2年以上従事
オルト―トルイジンの製造・取扱い5年以上従事
3・3′―ジクロロ―4・4′―ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の製造・取扱い2年以上従事
健康管理手帳の交付対象業務と要件(労働安全衛生法施行令第23条、労働安全衛生規則第53条第1項)

1・2―ジクロロプロパンは、印刷会社の校正印刷部門で胆管がんが多発したことを受けて加わった物質です。いずれも、労働基準法の施行日(1947年)以降に従事した業務が対象です。

申請の方法

健康管理手帳の流れの図解:対象業務に従事、要件を確認、労働局に申請(退職時は会社の所在地、退職後は住所地)、年2回無料で健診(じん肺は年1回)。会社は作業の記録と健診の個人票を保存しておく
  1. 健康管理手帳交付申請書(様式第7号)を用意します。
  2. 要件に該当する事実を証明する書類を添えます。書類がない場合は、その事実についての申立て書を添えます。ベリリウムや、石綿の所見による要件で申請する場合は、胸部エックス線写真なども添えます(労働安全衛生規則第53条第3項)。
  3. 離職の際は事業場の所在地、離職の後は住所地を管轄する都道府県労働局長に提出します。

従事した期間を証明するには、会社が保存している作業の記録や特殊健康診断の個人票が役立ちます。特定化学物質のうち特別管理物質の記録は30年、石綿の記録は40年の保存が必要なので、退職者から問い合わせがあったときに出せるよう保管しておきましょう(健康診断の記録の保存期間)。

手帳による健康診断

都道府県労働局長は、手帳を交付するときに、厚生労働大臣が定める健康診断を受けるよう勧告します(労働安全衛生規則第55条)。手帳を持つ人は、指定された医療機関や健康診断機関で、年2回(じん肺の手帳は年1回)、無料で健康診断を受けられます。手帳は他人に譲渡したり貸したりしてはいけません(労働安全衛生法第67条第3項)。

在職中は、会社が特殊健康診断を行います。石綿や特定化学物質の一部では、その業務から離れた後も在籍中は健康診断を続ける必要があります(石綿健康診断とは、特定化学物質健康診断とは)。退職によって会社の健康診断が終わった後も、手帳があれば国の費用で健康診断を続けられる仕組みです。

会社が退職者にできること

  • 対象業務の従事歴がある社員が退職するときに、健康管理手帳の制度と申請先を案内する
  • 従事した業務と期間がわかる書類(作業の記録、特殊健康診断の個人票の写しなど)を用意する
  • 退職後に申請する人からの、従事歴の証明の依頼に応じられるよう、記録を法定期間保存する

産業医が関わること

うえまつ産業医事務所にご相談ください

うえまつ産業医事務所では、石綿・特定化学物質・粉じんなどの特殊健康診断の結果確認と就業上の意見、退職者への健康管理手帳の案内や記録の保存についての助言を、毎月定額の範囲で行います。

  • 嘱託産業医:2か月に1回の訪問で月額30,000円、毎月訪問で月額50,000円(税別)
  • 従業員50人未満の顧問契約:月額20,000円(税別)/1回だけのスポット相談:20,000円(税別)
  • 毎月定額。職場巡視・衛生委員会への出席、臨時の相談・面談、交通費、意見書の作成、Webストレスチェック・健康管理Webに追加費用はかかりません
  • 紹介会社を通さず、労働衛生コンサルタント・総合内科専門医の上松が継続して担当します(京都・大阪・滋賀・奈良へ訪問、全国Web面談)

事務所の概要は京都の産業医|うえまつ産業医事務所、料金とご契約の流れは報酬・ご契約の流れ、ご相談はお問い合わせから(翌営業日までに返信します)。

よくある質問

健康管理手帳は誰がもらえますか?

石綿、粉じん、ベンジジン、塩化ビニルなど、がんその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある15の業務に従事し、業務ごとの要件(従事期間や胸部エックス線の所見など)にあてはまる人が、離職の際または離職の後に交付を受けられます(労働安全衛生法第67条、労働安全衛生規則第53条)。

健康管理手帳の申請はどこにしますか?

離職の際に申請するときは事業場の所在地、離職の後に申請するときは住所地を管轄する都道府県労働局長に申請します(労働安全衛生規則第53条第2項)。

手帳があるとどんな健康診断を受けられますか?

指定された医療機関で、年2回(じん肺の手帳は年1回)、無料で健康診断を受けられます。

会社は何をすればいいですか?

対象業務の経験がある社員の退職時に制度を案内し、従事歴を証明できる作業の記録や健康診断の個人票を保存しておきましょう。石綿の記録は40年、特別管理物質の記録は30年の保存が必要です。

まとめ

健康管理手帳は、石綿や粉じん、発がん性のある化学物質などを扱った人が、退職後も無料で健康診断を受け続けるための制度です。対象業務の経験がある社員が退職するときは制度を案内し、従事歴を証明できる記録を長期間保存しておきましょう。

参考:公的機関の資料

この記事の内容は、次の法令・公的機関の資料にもとづいています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。

この記事を書いた人

上松 弘典(うえまつ ひろのり)
うえまつ産業医事務所 所長。産業医・労働衛生コンサルタント・総合内科専門医・博士(社会健康医学)・MPH。京都市中京区(四条烏丸)を拠点に、京都・大阪・滋賀・奈良の事業場で嘱託産業医として訪問しています。九州大学医学部卒業後、内科・呼吸器内科の臨床に従事し、東京大学大学院(MPH)、京都大学大学院(博士・社会健康医学)を修了。一般企業のほか病院・クリニックの産業医も務め、メンタル不調・休職・復職の対応、健康診断後の就業判定、製造業の特殊健康診断、ストレスチェックを中心に、企業の健康管理を支援しています。

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