【過労】月80時間残業のリスク

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

今回は、【過重労働対策】をテーマにお話しします。 ニュースなどでもよく「月80時間の時間外労働(残業)を超えると過労死ライン」と言われますが、そもそもなぜ「80時間」が基準とされているのでしょうか。

1. 「月80時間残業」=睡眠不足による心身の限界

「月80時間」という数字は、決して適当に決められたものではありません。脳・心臓疾患の労災認定基準(いわゆる過労死ライン)として、厚生労働省が医学的根拠に基づいて設定したものです。

月80時間の残業とは、1日あたりに換算すると「毎日約4時間の残業」をしている状態を指します。 朝9時に出社し、夜22時まで働く。そこから帰宅のための通勤、食事、入浴などを済ませると、どう工夫しても「睡眠時間」を削るしかなくなります。

睡眠不足が慢性的に続くと、血圧が上がり、心臓や血管に常に強い負担(ストレス)がかかり続ける状態になります。これが長期間続くことで、脳出血や心筋梗塞といった、命に関わる重大な疾患の発症リスクが跳ね上がってしまうのです。過労死ラインとは、まさに「睡眠時間の確保が困難になり、生命の危機が迫るデッドライン」と言えます。

2. 命と会社を守る「過重労働面談」3つの実務ポイント

長時間労働による健康被害を防ぐため、一定の基準を超えた労働者に対する「産業医による面談指導(過重労働面談)」は法律で義務付けられている重要な支援制度です。

① 本人の「大丈夫です」を鵜呑みにしない

長時間労働が続いている人は、自律神経のうち「交感神経」が過剰に働き、一種の興奮状態(ハイ状態)になっていることがあります。そのため、疲労が蓄積しているにもかかわらず、「疲れていません」「面談は不要です」と断ってくるケースが少なくありません。 しかし、疲労を自覚できていない状態こそが最も危険です。「法律上のルールであり、あなたの健康を守るためです」と、会社として揺るぎない姿勢で面談を勧奨することが、結果的に従業員の命を救うことに繋がります。

② 産業医へ「客観的データ」を事前共有する

産業医が質の高い面談を行うためには、事前の情報収集が不可欠です。本人の直近の残業時間だけでなく、「過去の健康診断結果(特に血圧や心電図などの異常の有無)」や「有給休暇の取得状況」「業務内容の変化」といった客観的なデータを、面談前に必ず産業医に共有してください。これにより、産業医はより正確に健康リスクを評価することができます。

③ 面談実施後の「事後措置」を徹底する

産業医面談が終わったら、「面談を実施した」という記録を残して満足してはいけません。面談の結果、産業医から「これ以上の残業は危険である(就業制限)」という意見が出た場合は、人事から現場の管理職へ速やかに共有し、具体的な業務量の調整(事後措置)を行うところまでがセットです。

おわりに

長時間労働の根本的な削減は、現場の業務改善や人員配置が複雑に絡むため、人事の力だけですぐに解決できないことも多いのが実情です。

だからこそ、「過重労働面談」という仕組みを適切に機能させ、取り返しのつかない事態になる前にストップをかけることが重要です。従業員の大切な命と健康を守るため、ぜひ自社の産業医と連携し、実効性のある過重労働対策を築いていきましょう。