休職トラブルを防ぐ「復職基準」の作り方

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

今回は、「復職支援(主治医の診断書の扱い)」についてお話しします。

休職中の従業員から、「主治医から復職可能の診断書が出ましたので、来週から復帰します」と連絡を受けた際、「本当に元の業務をこなせる状態まで回復しているのだろうか」と戸惑われたご経験はないでしょうか。

1. 「治った(日常生活)」と「働ける(業務遂行)」の大きな壁

メンタルヘルス不調からの復職において最も起こりやすいトラブルは、ご本人の「もう働けます」という認識と、会社側の「まだ無理ではないか」という現場の認識のズレから生じます。

主治医が発行する「復職可能」という診断書は、必ずしも「休職前の業務を100%こなすことができる」という意味ではありません。 主治医は、職場の人間関係や業務のプレッシャー、残業時間といった「職場の実態」を正確には把握していません。多くの場合、主治医の診断は「決まった時間に起床できるようになった」「服薬を続けながらであれば、日常生活が送れるようになった」という基準で判断されています。

しかし、企業が復職において求めているのは「安全かつ継続的に業務を遂行できること(業務遂行能力の回復)」です。ここにある「日常生活レベル」と「業務遂行レベル」の大きなギャップを埋めることが、適切な復職支援の鍵となります。

2. 迷わない「復職基準」づくりと3つのステップ

① 会社としての「復職の最低条件」を言語化する

「なんとなく良さそうだから」という曖昧な理由で復職を判断しないために、あらかじめ企業としての客観的なハードル(復職基準)を明確にしておきましょう。 例えば、「週5日、決まった時間に安定して通勤・出社できる」「就業の8時間、集中力を維持して業務にあたれる(居眠りなどがない)」「他者と適切なコミュニケーションが取れる」といった基準です。

② 産業医面談で「職場の実態」をベースに判定する

主治医の診断書が提出されたら、そのまま現場に復帰させるのではなく、必ず「産業医面談」を実施してください。 その際、人事担当者は産業医に対して「該当部署は現在月30時間の残業が発生している」「クレーム対応を含む心理的負荷の高い業務がある」といった、職場のリアルな負荷を事前に共有することが重要です。産業医は医学的な視点から、その負荷にご本人が耐えうるか(就業判定)を客観的に見極めます。

③ 「元の100%」を求めず、段階的なプランを作成する

復職初日から休職前と同じ100%のパフォーマンスを求めるのはご本人にとって酷であり、再休職のリスクを著しく高めます。 「最初の1ヶ月は残業・休日出勤を禁止とする」「初めの2週間は午前中のみの勤務(試し出勤制度)とする」など、少しずつ業務負荷を上げていく段階的な計画を、人事・現場の管理職・ご本人の三者で事前に合意しておくことが重要です。

復職支援の際には

復職支援は、「病気が治ったかどうか」という医療的な判断と、「安全に働けるかどうか」という労務的な判断をすり合わせる、非常に繊細な実務です。

「主治医の許可は出ているが、本当に復帰させて大丈夫だろうか」と迷われた際は、企業内で抱え込まず、まずは自社の産業医にご相談いただき、安全で確実な復職の道筋を一緒に構築していきましょう。