本格的な夏を前に!職場の熱中症対策と「暑熱順化」
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皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。
5月も中旬に入り、汗ばむような日が増えてきましたね。身体がまだ暑さに慣れていないこの時期は、なんとなく疲れやすかったり、強い倦怠感を覚えたりしやすいものです。
さて、今回は「職場の暑さ対策(熱中症予防)」についてお話しします。 「熱中症対策は真夏になってからで十分では?」と思われるかもしれませんが、実は今の時期からの準備が健康管理において非常に重要です。
1. 気温だけで判断しない!熱中症予防の指標「暑さ指数(WBGT)」
職場の暑さ対策を講じる際、天気予報の「最高気温」だけを基準にしていませんか? 厚生労働省が定める「職場における熱中症予防基本対策要綱」では、気温だけでなく「暑さ指数(WBGT)」という指標を活用することが求められています。
暑さ指数(WBGT)とは、人間の体感や熱中症リスクに直結する①湿度、②日射・輻射熱(ふくしゃねつ:地面や壁から出る熱)、③気温の3つを総合した指標です。
熱中症を引き起こす要因の約7割が「湿度」だと言われています。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体内に熱がこもって一気に危険な状態に陥ってしまいます。「気温は25度だから大丈夫」と思っていても、湿度が80%あれば熱中症の危険度は跳ね上がります。
2. 5月・6月が危険な理由と「暑熱順化」
急に気温が上がった日や梅雨の晴れ間に熱中症が多発するのは、身体がまだ暑さに慣れていないためです。この、身体が徐々に暑さに適応していくプロセスを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」と呼びます。
暑熱順化が完了している(夏仕様の)身体は、低い体温でもサラサラとした良い汗をすぐにかけるため、上手に体温を逃がすことができます。しかし、今の時期の身体はまだ汗をかく機能が十分に働いておらず、体内に熱を溜め込みやすいため、真夏よりも低い気温で熱中症を発症してしまうのです。なお、暑熱順化には通常1〜2週間ほどかかると言われています。
3. 本格的な夏に向けて!今日から始める3つの対策
本格的な暑さが到来する前に、職場や個人で今日から取り組める具体的な対策を3つご紹介します。
① 職場での「暑さ指数(WBGT)」の見える化
気温計だけでなく、湿度やWBGTが測れる計測器をオフィスや作業場に設置しましょう。環境省の指針でも、WBGTが「28」を超えると熱中症患者が急増することが示されています。数値を「見える化」することで、「今日は湿度が高いから空調の除湿を強めよう」「こまめに休憩をとろう」といった具体的な予防行動に繋がります。
② 意図的に「汗をかく」習慣をつくる(暑熱順化の促進)
冷房の効いた涼しい部屋にずっといると、身体はいつまでも夏仕様になりません。帰宅時に1駅分だけ早歩きをしてみる、シャワーで済ませず湯船(少しぬるめの38度〜40度)にゆっくり浸かるなど、日常の中で「じんわり汗をかく」機会を意図的に作り、汗腺のトレーニングをしておきましょう。
③ 水分と「塩分」の適切な補給(自発的脱水の予防)
厚生労働省のガイドラインでは、大量に汗をかく作業の際には「0.1〜0.2%の食塩水、またはナトリウムを100mlあたり40〜80mg含むスポーツドリンク」などをこまめに飲むことが推奨されています。汗をかいているのに水やお茶だけを大量に飲むと、血液中の塩分濃度が低下し、身体がこれ以上水分を摂るまいとストップをかけてしまう「自発的脱水」を引き起こし、かえって熱中症を重症化させてしまうため注意が必要です。
まとめ
「暑さ」の感じ方や、汗のかきやすさ、その日の体調には大きな個人差があります。
「自分は大丈夫だろう」という過信を防ぎ、お互いの顔色や体調を気遣う声かけが、夏の職場をより安全なものにしてくれます。従業員の皆さんが本格的な夏を元気に、そして健康に乗り切れるよう、ぜひ今日から「WBGTの確認」や「暑熱順化」に目を向けてみてくださいね。
