午後の眠気や頭痛、実は「空気」のせい?

皆さん、こんにちは。

産業医面談で、従業員の方から「午後になると頭がぼーっとする」「会議室に長くいると頭痛がしてくる」といったご相談を受けることがよくあります。昼食後の眠気や疲労が原因と思われがちですが、実はオフィスの「二酸化炭素(CO2)濃度の上昇」が隠れた原因となっているケースが非常に多いのです。

特に、出社する人が増え、オフィスビルに多くの従業員が集まるようになると、この問題は顕著になります。今回は、CO2濃度が高くなりやすいオフィスの課題と、その解決策についてお話をします。

🚨 オフィスのCO2濃度はなぜ上がりやすいのか?

人は呼吸によって酸素を吸い、CO2を排出します。従業員が多いオフィスや、密室になりやすい会議室では、十分な換気が行われないとあっという間にCO2濃度が上昇します。

一般的に、外気のCO2濃度は400ppm程度ですが、室内のCO2濃度が1,000ppmを超えると、眠気や倦怠感を感じる人が出始め、2,000ppmを超えると集中力の低下や頭痛、息苦しさを訴える人が急増すると言われています。つまり、CO2濃度の上昇は、従業員の健康だけでなく、企業の生産性にも直結する重大な課題です。

【CO2濃度と人体への影響の目安】

CO2濃度(ppm)職場の空気環境レベル人体への影響・症状の目安
400 ppm 程度外気のレベル
(理想的な環境)
特に影響はありません。頭がすっきりし、快適に作業ができます。
1,000 ppm 以下法律の基準値内
(良好な環境)
良好な状態です。集中力を維持しやすく、健康的に働けます。
1,000 ppm 超換気不足のサイン
(要注意レベル)
眠気や倦怠感(だるさ)を感じる人が出始めます。
2,000 ppm 超極めて換気が悪い状態
(危険レベル)
集中力の低下や頭痛、息苦しさを訴える人が急増します。

このように、数字が上がるにつれて私たちの体や脳のパフォーマンスに直接的に悪影響を及ぼします。つまり、CO2濃度の上昇は、従業員の健康だけでなく、企業の生産性にも直結する重大な課題です。



👨‍🏫 法律で定められた基準と「空気環境測定」

「事務所衛生基準規則」(および建築物衛生法)では、室内のCO2濃度を「1,000ppm以下」(特例として、機械換気設備を設けている場合は1,000ppm以下、それ以外でもできるだけ低く保つこと)とする基準が設けられています。

一定規模以上のオフィスビルでは、法律に基づき2ヶ月に1回などの頻度で「空気環境測定」が実施されています。この測定結果の報告書を確認することはとても重要です。もし、定期測定でCO2濃度が基準値を上回っている場合には、ビル全体の換気システム(空調設備)の能力不足や、オフィスのレイアウトに対して人数が多すぎることが疑われます。まずは自社のオフィスがこの測定をクリアしているか、総務や施設管理の担当者に確認してみましょう。

🔑 適切なCO2測定器(センサー)の選び方

定期的な空気環境測定に加えて、日々の変化をリアルタイムで把握するために、まずは、オフィスにCO2モニターを一つ置いて、今の空気の状態を『見える化』してみてはいかがでしょうか。

測定器選びには少しだけコツがあります。安価なものの中には、手指のアルコール消毒液などに反応してしまい、正しく測れない「疑似センサー」が混ざっていることがあるのです。法令に沿って自信を持って環境管理できるよう、厚労省も推奨している「NDIR方式」(非分散型赤外線吸収方式)と書かれたものを選ぶと安心です。

【失敗しない!CO2測定器選び 3つのチェックポイント】

チェックポイント選ぶ理由・メリット確認方法
①「NDIR方式」か厚労省推奨の高精度センサー。
アルコール等への誤反応を防ぎます。
仕様欄に「NDIR方式(非分散型赤外線吸収方式)」の記載があるか。
②「校正機能」はあるか長期使用による数値のズレ(誤差)を正しく補正します。仕様欄に「手動校正」または「自動校正」機能の記載があるか。
③「色」で知らせてくれるか換気のタイミングを分かりやすく教えてくれます。濃度によって画面の色(緑・黄・赤など)が変わるタイプがおすすめです。


📝職場で取り組める4つのアクション

精度の高い測定器を導入し、数値が「見える化」されたら、次は改善に向けた行動です。

  1. 機械換気設備の最適化とメンテナンス
    まずはビルの管理会社と連携し、既存の空調・換気設備が設計通りに稼働しているか確認しましょう。フィルターの詰まりを清掃するだけで、換気効率が劇的に改善することがあります。
  2. ルールに基づいた窓開け換気
    機械換気だけで1,000ppm以下を維持できない場合、定期的な窓開けが必要です。「モニターが黄色(例: 800ppm超)になったら、5分間は窓とドアを対角線上に開ける」といった具体的な運用ルールを決めましょう。
  3. 会議室の利用人数の見直しとサーキュレーターの活用
    最もCO2が溜まりやすいのが会議室です。定員を減らす、長時間の会議では途中で必ずドアを開けて休憩を挟むなどの工夫が必要です。また、サーキュレーターを用いて室内の空気を撹拌し、出入り口に向けて風を送ることでも換気を促進できます。
  4. フリーアドレス等による人口密度の分散
    特定のエリアに人が集中しないよう、オフィス内のレイアウトや働き方を見直すことも、根本的な解決策の一つです。

🤝 おわりに

空気は目に見えません。だからこそ、正しく「見える化」し、基準に基づいた「対策」を行うことが、職場の衛生管理の第一歩となります。従業員の皆さんがイキイキと、そして健康に働けるオフィス環境づくりのために、ぜひ今日からオフィスの「空気」に目を向けてみてください。

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