「エイジフレンドリー」な職場づくり

皆さんこんにちは。うえまつ産業医事務所です。

5月もいよいよ最終営業日を迎えましたね。今回は、働くすべての人に必ず訪れる心身の変化に寄り添う「エイジフレンドリー(年齢に合わせた配慮)」についてお話しします。

「高年齢労働者向けの対策」と聞くと、ベテラン世代だけの話だと思われがちですが、実は「未来の自分」を守り、誰もが働きやすい職場をつくるための大切な取り組みなのです。

1. 気合いではカバーできない「身体の自然な変化」

「人生100年時代」と言われる今、定年後も長く働き続ける方が増加しています。それに伴い、ベテラン世代が安全に能力を発揮できる職場環境の整備が急務となっています。

例えば「視覚」の変化です。目のピントを合わせるレンズ(水晶体)は加齢とともに硬く、黄色っぽく変化するため、「60代の目は、20代の目よりも2〜3倍の明るさがないと同じように見えない」と言われています。

また、労働災害統計において高年齢労働者で最も多いのが「転倒」です。これは単なる足の筋力低下だけでなく、「自分の足がどれくらい上がっているか」という深部感覚にズレが生じやすくなるため、何もない平らな床や、わずかな段差でもつまずきやすくなります。

厚生労働省が定める「エイジフレンドリーガイドライン」でも、企業に対して、こうした加齢による心身の変化を個人の努力や気合いでカバーさせるのではなく、設備や作業環境の改善によって配慮することが求められています。

2. 誰もが働きやすい「ユニバーサル」な工夫

エイジフレンドリーな配慮は、高年齢労働者だけでなく、結果的に若手社員や怪我をしている人など、「すべての人が働きやすい環境(ユニバーサルデザイン)」に直結します。

① 視力への配慮:フォントサイズの統一と手元の照明

社内で共有する資料やマニュアルのフォントサイズを、「11〜12pt以上」の読みやすい大きさに統一しましょう。また、オフィス全体の照明を明るくするのは難しいため、手元を照らすデスクライトの貸与や、モニター画面の拡大表示のショートカットなどをチームで共有しておくことが効果的です。

② 足元への配慮:徹底した「5S」で転倒を防ぐ

通路に段ボールなどの荷物を置かない、床を這うLANケーブルや電源コードはカバーで覆う、滑りやすい場所にはマットを敷く。こうした「徹底した5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」が、最も基本かつ確実な転倒予防策になります。

③ 心理面への配慮:「手伝って」が言える心理的安全性

「最近、小さい文字が見えにくくて」「この荷物は腰にくるから、一緒に運んでもらえる?」と、身体の変化を隠さずにオープンに言える心理的安全性が何より大切です。年齢による変化をネガティブに捉えるのではなく、お互いにカバーし合える温かい風土を作りましょう。

働きやす職場とは

「誰もが同じようにできるべき」という思い込みを手放し、身体的な違いを認め合い、それぞれが安全で心地よく働けるよう少しずつ環境を調整していく。その思いやりこそが、全員が働きやすい職場をつくる最大の原動力になります。

エイジフレンドリーな視点は、企業のリスクマネジメントであると同時に、貴重な人材に長く活躍してもらうための大切な投資でもあります。「これなら今日からできそう」と思うものがあれば、ぜひご自身の職場で試してみてください。