中小企業において、しばしば管理監督者の長時間労働が問題となります。今回のコラムでは、なぜ管理監督者は長時間労働に陥りやすいのか、企業にはどのような安全配慮義務があるのか、そしてどのように対策を講じていくかについて簡単にお話したいと思います。

管理監督者が長時間労働になりやすい背景

中小企業では、管理監督者が多くの業務を担い、労働時間が長くなることが少なくありません。これは、企業の規模が大きくないために業務が特定の少人数に集中しやすいというのがあると思います。特に管理監督者は、組織の運営を円滑にするために多岐にわたる業務をこなす必要があり、業務量が増加しがちです。

そのうえで、管理監督者に対しては、労働基準法上の時間外労働の上限規制が適用されないことが、長時間労働に繋がっているのではと考えられます。

そもそも管理職は管理監督者か?

よく、○○さんは、管理職だから時間外労働しても残業代もないし、残業規制もないよと言われます。しかしながら管理職が必ずしも管理監督者とは限りません。労働基準法上の管理監督者とは、事業の管理や監督に従事し、労働時間や休憩、休日について一定の裁量権を持つ者を指しますが、現実には管理職であっても実際にはこれらの裁量権を持たない場合があります。例えば、部門の責任者であっても、決定権が限定されている場合や、実際の業務が従業員と同様に細かく指示されている場合は、管理監督者とはみなされないようです。あくまで実態をみられるということでしょう。

管理監督者の長時間労働に対する企業の安全配慮義務

企業には、従業員の健康と安全を確保する義務があります。これは管理監督者に対しても例外ではありません。管理監督者が長時間労働を続けることで健康を害するリスクが高まるため、企業は適切な対策を講じる必要があります。例えば、定期的な健康診断の実施や、長時間労働が常態化している場合には早急に対応策を検討することが求められます。過労死や過労自殺のリスクを未然に防ぐために、メンタル含めたヘルスケアの強化も重要です。

管理監督者の労働時間の把握

管理監督者の労働時間の把握は一般の従業員と異なり、管理監督者には時間外労働や休日労働の規制はありませんが、それでも過度な労働は健康面からみても避けるべきかと思います。2019年4月から施行された働き方改革関連法に伴い労働安全衛生法改正され、管理監督者の労働時間の把握が求められるようなっています。

産業医面談実施義務

企業は、一定の条件下で産業医面談を実施する義務があります。具体的には、月80時間以上の時間外労働が続く従業員に対して、労働者の申し出があれば、産業医との面談を行うことが義務付けられています。管理監督者も例外ではなく、長時間労働が常態化している場合には、産業医との面談を積極的に実施することが求められています。

産業医面談では、労働者の健康状態を評価し、必要に応じて労働条件の改善を提案することが重要です。これにより、過労による健康被害を未然に防ぐことができるでしょう。

管理監督者の長時間労働への対策

管理監督者の長時間労働に対する具体的な対策を簡単にまとめます。

1. 業務の見直しと効率化

まず、業務内容を見直し、不要な業務を削減、本人以外に仕事をまかせることができないかを検討することが重要です。また、業務の効率化を図るためにITツールや自動化の導入も検討しましょう。

2. 労働時間の適正化

管理監督者の労働時間を適正化するためには、まずは労働時間の見える化が重要です。タイムカードや労働時間管理システムを導入し、実態を把握することが大切です。

3. 健康管理とメンタルヘルスケア

定期的な健康診断の実施や、メンタルヘルスケアの強化、従業員全体への健康習慣の浸透も重要です。産業医やカウンセラーとの連携を強化し、従業員の健康状態を継続的にモニタリングすることが求められます。

4. 休暇の取得促進

管理監督者が適切に休暇を取得できるよう、企業としての制度整備や休暇取得の促進を図ることが必要です。特に有給休暇の取得率を向上させるための施策を講じることが重要です。

5. 管理監督者の教育と研修

管理監督者自身が労働時間管理や健康管理の重要性を理解することも重要です。そのためには、定期的な教育や研修の実施が効果的です。

まとめ

中小企業における管理監督者の長時間労働は、企業全体の生産性や従業員の健康に重大な影響を与える可能性があります。企業は、管理監督者の労働時間を適切に管理し、健康と安全を確保するための対策を講じることが求められます。労働時間の見える化、健康管理の強化、業務の効率化など、具体的な対策を積極的に実施し、持続可能な労働環境を構築することが重要です。これにより、管理監督者をはじめとする全従業員が健全な労働環境で働くことができ、企業の発展にも繋がるでしょう。

企業が従業員の健康と安全を第一に考え、持続可能な労働環境を整えることが、結果として企業の競争力を高める一因となるのです。管理監督者の長時間労働に対する理解と対策を深め、健康経営の推進を目指しましょう。

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