少人数の会社ほど「見えない危険」が多い?
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従業員50名未満は義務は少ないですが....
こんにちは。産業医のうえまつです。
私は現在、従業員数名から数百名規模の様々な業種の事業所を産業医として担当させて頂いております。労働安全衛生でいうところの小規模事業所は50名未満を指すことが多いのですが、小規模事業所では従業員の命を守るガードが弱くなりがちであることを職務を通して実感します。従業員50人未満の事業所では産業医や衛生管理者の選任義務はなく、安全衛生委員会の設置も義務ではなく、ストレスチェックは努力義務(2028年5月までに義務化)ですね。
厚生労働省公表のデータをみても、**「小規模事業所ほど、様々な健康・安全リスクに対して脆弱」そうだということがみてとれます。
今回は、直近の**「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」**の結果を参考にしながら、小規模事業所が直面しているリスクを見てみたいと思います。
データで見る従業員規模別「産業保健の格差」:
事業所における労働安全衛生の取り組みは多岐にわたり、事業内容によっても取り組むべきものは変わりますが、その中でも代表的な取り組みである、女性特有の健康課題、健康診断、メンタルヘルス対策に関する取り組み実施率をみてみましょう。
1. 【女性の健康】女性特有の健康課題に対する配慮
生理痛、PMS(月経前症候群)、更年期障害、不妊治療など、女性特有の健康課題に対する取り組みの有無です。女性活躍が叫ばれる中、この差は人材定着に直結します。
- 1,000人以上の事業所: 63.8.% が取り組んでいる
- 10~29人の事業所: わずか 28.2%
大企業の半数以上が、休暇制度や相談窓口の設置など何らかの対策を講じているのに対し、小規模事業所ではいまだ手つかずのままのようです。 これでは女性社員が体調不良を誰にも相談できず、離職を選ばざるを得ない状況に至っているケースもあるかもしれません。
2. 【健康管理】健康診断後の指導支援相談
産業保健の健康管理の基本でもある健康診断結果後の産業保健の取り組みにも明らかな差がありそうです。
- 1,000人以上の事業所: 89.1% が実施
- 10~29人の事業所: 57.6%
実際初めて担当させていただく小規模事業所の健康診断や特殊健康診断の結果を拝見すると、異常高値が数年続いている例をみることも少なくありません。
3. 【メンタル】メンタルヘルス対策の取り組み
そして、やはり最も差が大きいのが「心の健康」です。
- 1,000人以上の事業所: 100.0%
- 10~29人の事業所: 68.5%
大企業では当たり前の相談窓口やストレスチェックが、小規模事業所では「個人の問題」として処理されがちな状況もあるかもしれません。
「何もしていない」こと自体が最大のリスク
これらのデータから見えてくるのは、**「規模が小さい会社ほど、働く人の健康を守るための『予防線』が張られていない」のではないかということです。
産業医として私が懸念するのは、この「予防線のなさ」が、いざという時の会社の大ダメージにつながってしまうことです。
- 従業員の健康管理不足による労災事故が起きれば、業務停止命令や損害賠償で会社が傾きます。
- ストレス放置で従業員が体調を崩せば、ギリギリの人数で回している現場は一気に回らなくなります。
また小規模事業所では従業委の1人が健康問題をかかえると「致命傷」になるリスクが大企業よりも高いでしょう。ですが、小規模事業所の方が対策(予防)が進んでいない。という現状であるとみています。
お金をなるべくかけずに安全衛生管理
「対策が必要なのはわかるが、お金はあまりかけたくない」 そのような事業所様も少なくないかと思います。
「地域産業保健センター(地さん保)」という言葉をご存じでしょうか? 従業員50人未満の事業所だけが使える無料の公的サービスです。
- 健康診断結果についての医師からの意見聴取
- 長時間労働者への面接指導
- メンタルヘルス不調の相談
- 作業環境管理(化学物質管理など)のアドバイス
これらをすべて無料で利用できます。
ただし無料であるがために、地域によっては、依頼しても業務過多のために、すぐに対応してもらえなかったり、担当する先生が毎回変わったり、利用回数に制限があったりというのはあるそうです。
弊社もこのような社会課題を鑑み、小規模事業所の安全衛生管理をリーズナブルな価格で請け負わせて頂いています。いつでもご相談お待ちしております。
最後に
「50人の壁」は法律上の区切りに過ぎませんが、そこで働く人個人の大切さは、会社の規模とは無関係だと思います。
今回ご紹介したデータを見て、「うちはその『実施していない数パーセント』に入っているかもしれない」と感じた経営者様。 まずは「地域産業保健センター」へ一本電話をすることから始めてみませんか?
その小さなアクションが、大切な従業員と、会社の未来を守ることにつながります。
【参考文献】
- 厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」結果の概況 (主な取り組み状況の事業所規模別データより引用)
